オーダーメイドの結婚指輪・マリッジリングの彫金日誌です。taxonomy-blogu-php
以前よりご注文いただいておりましたマリッジリングですが、何組かを同時進行で進めていたのでまとめて仕上げました。日数的に余裕のあった方も、なかった方もお待たせいたしました。それぞれご連絡を入れて受け渡しの準備を進めています。
県外のお客様は宅配便等で送らせていただいております。県内のお客様はこれから受け取りに来られる予定です。少し一段落いたしました。でもまだご注文があるので頑張らなければいけません。
以前このブログでご紹介いたしました5mm幅リング用のサイズゲージリングをシルバーで鋳造しました。シルバーは鋳造時の温度さえ気をつければキレイに鋳型に流れてくれます。鋳造直後の鋳肌はグレーなのですが酸処理して白くなった写真です。
上の写真はキサゲ作業まで終わったところです。
話は変わりますが年末に向けて当店オリジナルマリッジリングの新作を作りました。オーダーメイドが忙しかったのでなかなか新作が作れなかったのですが、そろそろ新作を出さないといけないと思っていたので忙しい合間を縫って作業を進めていました。2モデル作ったのですがその一つが下の写真です。
モデル名は「Spur」です。シュプールと読みます。冬の定番のスポーツであるスキーをモチーフにしてデザインいたしました。サイドには雪の結晶の彫刻を施して冬のロマンチックさを演出しています。レディスには8個のダイヤモンドを彫り留めしています。その内の1個はアイスブルーダイヤという薄い水色のダイヤモンドを彫り留めしています。普通のブルーダイヤに比べて淡いブルーなのでこのリングのイメージにとてもマッチしていると思います。近々ホームページのO2オリジナルマリッジリング内にアップいたしますのでホームページ上からの購入も可能になります。もう一つのモデルは後日ご紹介します。お楽しみにお待ち下さい。
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新しくハンドモーターを購入いたしました。今までの物が壊れたわけでも無く、仕上げのバフ掛けなどは充分作業できたのですがただひとつ不便に思っていることがありまして、購入することにしました。その作業はドリルでの穴あけと、石留めの際に石の大きさに合わせて穴を広げるストーンセッティングです。
今までのハンドモーターは最小回転数が3500回転でしたが特にストーンセッティングの場合は回転数が早すぎるため、ドリルをピンバイスにセットして手でグリグリと穴を広げていました。手での作業は結構時間が掛かり、効率が良くありませんでした。新しいハンドモーターは最小が1000回転で低回転でもトルクがあります。
このハンドモーターは業界では定評のあるNAKANISHIの機械です。正逆回転が出来るため、磨いたり削ったりするときに威力を発揮します。また回転数がデジタルで表示されるため同一条件での正確な作業が出来ます。さらに、フィードバック機能という物が付いていてモーターに負荷が掛かると普通は回転数が落ちるのですが、落ちようとする回転数を一定の回転数に戻そうとする回路です。
本体のスイッチ以外にハンドピース部分にもON/OFFスイッチが付いています。無くてもいいんじゃないの?と言われそうですがこれが意外と重宝します。私の場合、対象物とハンドピースを持って両手がふさがった状態でスイッチを操作しなければならない状況になるときがあります。そんな時このスイッチを机の角などで押すことが出来ます。フットスイッチを付けても同じなのですが足下が結構ごちゃごちゃしているのでフットスイッチは付けないことにしました。ハンドモーターの中でも結構高価で12万円ほどしますが作業効率が上がれば文句なしです。
こちらの作業机も新調いたしました。
以前鋳造した物がまだ仕上がっていませんが作業を平行して本日もマリッジリングを2組鋳造しました。仕上げの作業と、ワックス原型製作、鋳造を平行して行っています。明日も朝一でもう一組マリッジリングをプラチナで鋳造する予定です。
順調に作業が進められるようになりましたらネットでのオーダーメイド相談も再開する予定ですのでもうしばらくお待ち下さい。
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今日は朝からプラチナの鋳造からはじめました。最近は前日夜に電気炉のプログラムをセットし、朝から鋳造を始められるようにしております。今日はプラチナを2缶鋳造する予定でした。いつものように鋳造機のスイッチを入れ、プラチナ地金をセットし、真空ポンプ、コンプレッサーを起動して、いつものタイミングで地金を流し込みました。
が、・・・!?あれっ。鋳造機の圧力計の目盛りが加圧方向に振れません。私の使っている鋳造機は真空加圧鋳造機と言って加熱中真空状態にし、地金を加圧して原型空洞内に流し込むという物なのですが、地金を流し込むタイミングで加圧されていないようです。バルブは全て繋がっているようですし、壊れたか?しかし、よく見るとコンプレッサーに繋がっているバルブが鋳造機に繋がっているパイプではなく、他の機械に繋がっているパイプでした。コンプレッサーを兼用で色々な機械に使っているので鋳造機に繋ぎ直すのを忘れていたようでした。以前にもつなぎ忘れてリングをお釈迦にしたことがあったので頭の中が真っ白になりました。
また一から原型の作り直しか(>o<)まいったな。と思いながらまだ流し込まれた地金が真っ赤な状態のままバケツにどぼん。それから5秒ほどでしょうか?グツグツ。ドッカーーーーン!!地金が全く冷めない状態のままバケツに入れてしまったので水蒸気爆発が起きて、そこら中水浸しで頭まで水をかぶってしまいました。Wでやっちゃった感じ。急いで鋳造した地金を探しましたが見つかりません。なんとワイシャツの胸ポケットの中に有りました。爆発で飛ばされたようです。驚きました。
バケツの水は埋没材の石膏の混じった水なので水浸しになったところは乾くと真っ白になりました。むろん私自身も真っ白になりました。これから気をつけます。
しかし、幸いなことにコンプレッサーで加圧されなかったにもかかわらず鋳造はしっかり出来ていました。ほっとしました。(^^)v 加圧無しでも温度とタイミングによって鋳造はキレイに出来るみたいです。
先日ワックス原型を作ったクジラのマリッジリングです。巣もなくキレイに出来てほんとに安心しました。
先日2度目のご来店のお客様がご自分でデザインを考えて来られました。この絵はお客様が描いて持ってきていただいた物です。ボールペンでさらりと描いた物ですがプロが描いたような絵で驚きました。もともと絵心のあるお客様のようで、特に手直しするところもなくこのままのデザインでお作りする事になりました。
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今回オーダーメイドマリッジリングのご依頼があったのはクジラのモチーフを指輪に入れるという物です。彼がクジラが大好きでどうしてもクジラをマリッジリングにしたいと彼女を説得していました。この指輪を製作するにあたり、ワックスの原型をジュエリーCADで製作し、コンピュータ切削しました。上の写真はモデリング段階の途中です。上がレディスで、下がメンズになります。合わせると一頭のクジラが浮き上がるマリッジリングです。写真ではリングを広げた状態ですがこれをリング上に丸めて仕上げていきます。
このジュエリーCADで製作する方法は彫金の技術とコンピュータ3Dグラフィックの知識が必要で、主に大手メーカーが使用している方法ですが、小売店規模の工房などではかなり少ないと聞きます。現に四国でこの機械を導入しているのは当店だけだそうです。ソフトで20万~30万円、コンピュータ切削機は100万円~200万円ほどします。かなり高価な物ですが機械の値段をペイ出来るかどうかわかりませんでしたがどうしても欲しくて3年ほど前に導入しました。今では指輪製作に無くてはならない存在です。
手作業では到底不可能な細かいレリーフの原型もモデリングデータさえしっかり作れば機械が勝手に作ってくれます。
メンズのワックス原型が削り上がったところです。一応機械での切削はここまでですがもっと細かく作り込むことも出来ます。ただし、データ作りに時間が掛かりすぎるので後は手作業で原型を仕上げていきます。
レディスとメンズが削り上がりました。写真ではレリーフが解りにくいですね(^^;)
もう一組3D切削しました。模様がはっきり見えるようにワックスの粉が付いたまま写真を撮ってみました。イニシャルをモチーフにNとMです。合わせるとハートが浮き上がるデザインです。
この2本を合わせてひとつのモチーフを浮き上がらせるデザインの3Dデータを作るのはかなり計算した上で無いと作れないので、ひょっとすれば当店だけでは?なんて思っています。
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6月ごろからオーダー結婚指輪の依頼が集中していて毎日、ワックス原型製作、鋳造、仕上げに追われる毎日を忙しく過ごしております。店頭ではオーダー品以外にもブランドジュエリーなども扱っておりますので、お客様が来店されると作業を中断して接客を行っておりますから、ほとんど作業が出来ない日もあります。現在、結婚指輪の納品予定は10月以降の物が多いので助かっていますが(^^;)
本日制作中のワックス原型はかなり精密なデザインの物なのでルーペでは細かい部分が確認できず、マイクロスコープを覗きながらの細部の仕上げをしております。上の写真は英語のHをデザインした物で、メンズです。レディスと合わせるとクローバーの模様が浮かび上がるようにデザインしています。
ワックスの段階で細かいキズを除去しておくと鋳造した後の仕上げがかなり楽になり、仕上げの精度にも影響します。かなり細かい部分のキズの確認にはマイクロスコープは欠かせません。
こちらはペガサスとユニコーンをデザインした指輪で他県からのご依頼の物です。こちらも細かいレリーフなので慎重に仕上げしています。
上の写真の指輪原型を埋没して、明日の鋳造に備えて電気炉にセットしました。
電気炉のプログラムをパターン1にセットします。このコントローラーは温度管理を4パターンまでメモリー出来るので大変重宝しています。パターン1はプラチナ用のパターンをメモリーしています。
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オーダーメイドマリッジリングを製作するためプラチナ地金が足りなくなると注文して取り寄せます。現在の相場はかなり高めですが、たくさん必要なので50g注文し、本日届きました。
鋳造する地金を用意するためデジタル秤で量ります。この秤はネットで購入した物です。価格は安いのですが0.001g単位で重さが量れる優れものです。この秤で地金と割金の量を正確に量り、指輪用のプラチナ、金などの地金を作ります。モードを変えるとカラット秤にもなるのでダイヤモンドなどの石目の計測などにも使用できます。相当昔ですが私の修業時代ではこういった物はなく、かなりアナログな上皿天秤を使っていました。
こちらがその上皿天秤です。現在は工房の片隅でホコリをかぶっています。長年使っていた物なので愛着があって捨てられません。使うことは無いと思いますが置いておきます。
本日一組のプラチナマリッジリングの鋳造をしました。鋳造だけして仕上がっていない指輪がまだたくさんあるのですが、効率よく合間に鋳造作業をします。今回も巣は全くないと言っていいほどキレイに鋳造しあがりました。巣があると仕上げの作業に手間がかかるので巣が出来ないように慎重に鋳造をしています。
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このダイヤモンドは0.2ctのネックレスのトップ部分です。現在は3本の爪で留められていますが、この石座をオーソドックスな6本爪に作りかえる依頼を頂きました。
まず、石座の基になる部分をプラチナで作ります。薄い板状のプラチナをダイヤのガードルの大きさに合わせて丸めてロー付けします。
あまりに小さいパーツなのでそこの部分にプラチナの丸棒を溶接し、ピンバイスにセットできるようにしています。糸ノコで6つの爪になるように切れ目を入れます。
切れ目を入れた部分にヤスリをかけて爪の先が細くなるように成型します。
ヤットコか、矢坊主で均等に外側に広げます。ダイヤのガードルと同じ大きさのストーンセッティングで削ってダイヤが中心にのるようにします。
ダイヤを載せて確認。ダイヤが傾いていないか要注意!
チェーンを通すパーツをロー付けしてから、ダイヤを石留めします。お客様の要望で爪はなるべく小さくしています。
ストーンセッティングです。通常は、直径0.25mm刻みでしか販売されていませんが、自分で直径が0.05mm刻みになるように作っています。
キレイにバフ掛けし、仕上げていきます。
かわいらしい6本爪のプチネックレスの完成です。
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昨日は台風でお店を閉めていたので彫金作業だけを効率よく進めることが出来ました。今日はワックスツリーの埋没作業をご紹介します。いつものように指輪のワックス原型をツリー状にセットします。
鋳造リングをかぶせて固定します。
こちらが埋没材です。水との比率が決まっているので秤で正確に量を測っておきます。
ミキシングボールと言うゴム製のボールに水を入れ先ほど量った埋没材を入れて溶いていきます。プラチナ用の埋没材は金、シルバーと違って石膏ではありません。石膏だと2000℃のプラチナ溶湯があたるとガスが発生し良くありません。ですからプラチナ用の特別な埋没剤を使います。
水で溶いた埋没剤を真空脱泡器という機械に入れて真空に近い状態にし、埋没剤の気泡を完全に除去します。
余談ですが日常の気圧(1気圧)では水は100℃で沸騰しますが気圧が下がると低温でも沸騰します。真空脱泡器によって気圧を下げると埋没剤が沸騰し、中の気泡が抜けると言う具合です。強力な真空ポンプを使って水を完全な真空状態の中に入れると沸騰して、熱を放出し、最後には氷になるのを見たことがあります。沸騰して氷になるとは何とも不思議です。だから宇宙空間では水はすべて氷の固体になっているようです。
気泡を抜いた埋没剤を鋳造リングに流し込みます。
今度は鋳造リングごと真空脱泡器にかけて2次脱泡をおこない完全に気泡を無くします。
プラチナで鋳造した直後です。キレイにツリーから切り離して6本のマリッジリングが出来上がりました。この後丁寧に仕上げていきます。
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6月に結婚式を挙げられる方が多いので4月、5月がマリッジリングのご注文のピークだと思っていたのですが夏に結婚式を挙げられる方も少なくないようでオーダーの依頼が結構あります。製作に追われる毎日で忙しく過ごしております。そんな中でプラチナでシンプルな平打ちリングを作って欲しいという依頼がありました。鋳造ではなく昔ながらの鍛冶屋さん方式で作りましたので製作過程をご紹介します。
まずプラチナの地金を溶解して一塊にします。地金をシリカ製のルツボに必要な分だけ入れます。
プラチナを酸素バーナーで溶かします。溶解温度は2000℃ほどですので肉眼ではまぶしくて見えません。サングラスなどを掛けての作業を必要とします。デジタルカメラで撮影できるかどうか試してみたら一応写りました。
冷えて固まったプラチナ地金です。真ん中が凹んでいるのが解ると思いますがこれがキレイに溶解できたサインです。この状態で凝固していない場合は地金の中にガスが混入していて、たたいたり伸ばしたりするときに割れてしまいます。プラチナの溶解はただ溶かせばよいのではなくて結構技術のいる作業です。
固まった地金をやっとこで挟み、金槌を使って金床の上でたたいて四角い形に成型していきます。
時々バーナーでなましながら、こんな感じになるまで金槌で成型します。
ローラーという地金を引き延ばす機械で薄くのばしていきます。
こんな感じのリング仕上がり寸法と同じくらいの板状の物を作ります。この板を計算によりはじき出した指のサイズ分の長さにカットします。
円柱型に凹んだ金床の上で指輪の形に成型していきます。
こんな感じで丸く成型できます。やっとこで曲げていくことも出来ますがやっとこを使うとリングの内側にやっとこ傷が付くのでなるべく使わないようにしています。
つなぎ目をすき間無くピッタリ合わせてこの後、溶接作業です。
溶接には共付けに近い状態で行います。普通のプラチナローを使うと幅の広いリングの場合、溶接箇所にロー目と言われるスジが目立つので使いません。共付け作業は本体のプラチナが溶ける寸前の温度まで加熱しなければいけないので本体が溶けないようにかなり慎重におこないます。
溶接がキレイに出来ました。
指輪を芯がねと言われる棒状の工具で真円にし、注文いただいた指のサイズにピッタリ合わせます。この後ヤスリで成型し、仕上げていきます。
プラチナの仕上げには昔ながらのヘラと呼ばれる工具を使います。このヘラは地金の表面に押しつけながらこするような感じで使います。そうすることによって地金の表面が加工硬化し引き締まって固くなります。ヘラを使うのと使わないのでは仕上げの光沢が全然違います。
仕上がりの写真です。地金の表面に曇りが無くキレイに光沢が出ています。単純な指輪ですが、このような平面で構成された指輪は仕上げに高度が技術を要します。
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